法が変わると、正義も変わる?|「過払い軒物語」補遺(日本ファイナンス寄稿コラム)

コラム

正しさは誰が決めるのか?今回は「過払い軒物語」について補足説明をしたショートコラムをお届けします。

日本ファイナンスでは2013年から2018年までの5年間、九州地方発行のフリーペーパー「北九魂(旧キタキュウ.ビズ)」でコラムを掲載させて頂きました。

今回は2015年12月号掲載のコラムを再掲させていただきます。

(※公式YouTubeチャンネルにオーディオブック版を投稿しております。ぜひご覧ください。)

【オーディオブック版】

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 前号の私の記事を読まれた方の中には、いつもと違った文体に驚かれた方もいるのではなかろうか。少し長めの物語を書いてみたので、未読の方はぜひ前号 (KTQ.BIZ11月号掲載)を紐解いていただきたい。それは「過払い軒物語」という題名の読み物で、登場人物などはもちろん全て架空のものだが、話の設定については実際の出来事などをできるだけ忠実に反映させている。よって事情の分かる方にはすぐ理解していただけたと思うのだが、予備知識の無い方にとっては意味が分かりにくかったかと思われるので、今回は前号記事の補足説明をしてみたい。

 「過払い軒物語」 は、 貸金業界で急増した「過払い金返還請求」をテーマとして書いたもの。「過払い金返還請求」とは、消費者金融などの利用者が業者に対して、過去に返済していた利息のうち、法律で定める金利よりも多く払っていた部分について返還を求めることを指す。ここで問題となるのが「法律で定める金利」だ。この国には受け取れる金利の上限を定める法律が2つある。「利息制限法」と「出資法」だ。利息制限法では上限を 20% と定めているが、出資法ではかつて一定の条件を満たせばより多くの金利を受領することができる(例えば29.2%)ということが条文に明記されていた。そして大多数の業者は出資法に従って営業をしていた。ここで大切なこと。それは金利の高低の賛否ではなく、業者が受領していた金利が、出資法の条件を満たしていたこと。つまり金利は「合法的な」ものであったという事実である。過払い金返還に関する広告の中には「違法な金利を取り戻そう」と書かれたものも少なくないが、これは明らかに一面的な事実でしかなく、誤解を生んでいる。業者が受領していた金利、利用者が返済していた金利は、利息制限法には違法な金利であったかもしれないが、出資法によれば間違いなく「合法的な」金利であったのだ。昨日まで正しいと認められていたことが、今日には間違いだと非難される。それが誰にでも起きる可能性があるということを、前号の物語を読んで感じていただけたらと思う。

(執筆者:松原剛)

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